貯金がまだ少ない段階で、NISAを始めてしまってよいのか迷う方は多いはずです。引っ越しや転職、結婚など、近いうちにまとまった出費が控えている20代ほど、始めるタイミングがつかみにくいものです。
この記事の結論
貯金が少なくても、NISAを始めること自体に問題はありません。判断の決め手は現在の預金残高そのものではなく、「手をつけない生活防衛資金」と「数年以内に使う予定の資金」を差し引いた上で、毎月無理なく回せる余力があるかどうかです。
具体的なアプローチは、現在のお財布事情によって次のように分かれます。
- 生活防衛資金がまだ貯まっていない人:積立投資よりもまず現金の確保を最優先にする
- 数年以内に使う予定がある人:その資金は預金として確保し、残りの余剰分からスタートする
- 生活防衛資金と直近の予定資金を確保できている人:少額からスタートし、昇給やボーナスに合わせて増額する
現金を貯めている準備期間であっても、口座開設や最初のファンド選びを進めておくことは可能です。
積立額の決め方そのものを知りたい人は積立額を決める3つの順番へ。
20代がNISAで迷いやすい理由(ライフイベントの出費が重なりやすい年代特性)
迷ってしまうのは当然です。20代は転職や結婚、引っ越しなど、数年以内にまとまった現金が必要になる機会が集中しやすい時期にあたるためです。
「貯金が少ないのに始めて大丈夫か」と足踏みしてしまう背景には、単なる知識不足ではなく、20代ならではの生活環境の急激な変化があります。
引っ越し・転職・結婚などの出費が重なり、手元に残すべき現金額を決めにくい
20代は生活環境が変わりやすく、敷金・礼金や転職活動の予備費、結婚資金など、まとまった現金支出のタイミングが重なりがちです。
大きな出費の予定が重なると、「生活防衛資金としていくら手元に残すべきか」が見通しにくくなり、結果として毎月の積立額も決められなくなってしまいます。
手取りが少ないうちは「現金の貯蓄」と「投資への積立」の両立が難しい
社会人経験が浅く手取り収入がまだ少ない時期は、手元の現金を貯めることとNISAの積立を同時に進めるのはハードルが高く感じられます。
両方に中途半端に資金を振り分けようとして家計が苦しくなってしまうのを防ぐためにも、優先順位を整理しておく必要があります。
周囲の積立額に影響され、生活防衛資金が整う前に無理な金額を設定してしまう
同世代の友人やSNSで「毎月〇万円積み立てている」という話を聞くと、自分も同じペースで始めなければと焦ってしまいがちです。
しかし、他人の積立額はその人の貯蓄事情に基づいたものです。自分の積立額は、あくまでご自身の安全な現金残高から逆算して決めれば十分です。
NISAに「貯金の多さ」は関係ない。少額から始めて後から無理なく増額できる
口座開設の条件に資産額の制限はありません。大切なのは「今の家計に合った金額で始めること」です。
口座開設の条件は年齢と居住地のみ。現在の貯金額や収入は一切問われない
20代の方がNISA口座を開設する条件は、日本国内に居住していることと、開設する年の1月1日時点で18歳以上であることの2点だけです。
審査において預金残高や年収が問われることは一切ありません。本人確認書類とマイナンバーがあれば誰でも手軽に開設できます。
主要ネット証券なら少額から設定可能。後からいつでも管理画面で増額できる
楽天証券、SBI証券、マネックス証券などでは、最低100円といったワンコイン感覚の少額から積立をスタートできます。
積立額はログイン後の画面からいつでも自由に変更できるため、給与が上がったりボーナスが出たりしたタイミングで段階的に引き上げることが可能です。
非課税期間は「無期限」。まずは生活防衛資金を優先しても生涯枠は減らない
現行のNISAは非課税保有期間が無期限となっています。「早く始めないと期間が足りなくなる」と焦る必要はありません。
一生涯で使える1,800万円の枠(非課税保有限度額)はいつでも使えますので、まずは手元の現金をしっかり確保してから本格的な積立に移っても損にはなりません。
20代の貯蓄術(「数年以内に使うお金」をあらかじめ分けておく)
生活防衛資金の重要性はどの世代も共通ですが、20代は特に「直近数年で使い道が決まっているお金」を切り離すことが重要です。
手元の資金は、次の3つの役割に分けて管理するのが基本です。
- 手をつけない生活防衛資金(病気や急な出費に備える数か月分の生活費)
- 数年以内に使う予定の資金(引っ越し、結婚、転職準備などの明確な出費)
- 将来のための積立資金(上記2つを差し引いた、10年以上使わない余剰金)
投資に回してよいのは、あくまで3つ目の「積立資金」のみとなります。
手をつけない生活防衛資金は、急な出費時に投資資産を取り崩さないための防波堤
予期せぬケガや家電の故障などがあっても、積み立てたファンドを売却せずに乗り切るための現金を確保しておきましょう。詳しい金額の目安は、積立額を決める3つの順番に沿って算出できます。
引っ越しや結婚など利用時期が近い資金は、下落リスクを避けるため預金で管理する
賃貸の更新費用や結婚式代のように使う時期が確定している資金を投資に回してしまうと、必要なタイミングでたまたま相場が急落していた場合、元本割れの状態で泣く泣く解約することになりかねません。
使う予定が見えている資金は、相場リスクに晒さず安全な普通預金などで確実に残しておきましょう。
転職を視野に入れている場合は、無収入期間を想定した生活費を別枠でキープする
次の就職先を決めずに退職する場合や、転職に伴う転居がある場合は、数か月分の生活費を直近の必要資金として現金で確保しておく必要があります。
奨学金を返済中の場合は、借入利率と運用期待リターンを比較して検討する
日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金のうち、利息が発生するのは第二種奨学金です(第一種は無利息)。
第二種の貸与利率は上限が年3%と法律で低く抑えられており、一般のカードローンなどと比べると非常に低利です。
| 借入の種類 | 金利上限(年率) | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 日本学生支援機構 第二種奨学金 | 年3%以下 | 独立行政法人日本学生支援機構法施行令 |
| 一般的な金銭消費貸借(カードローン等) | 年15〜20% | 利息制限法 |
出典:e-Gov法令検索 独立行政法人日本学生支援機構法施行令/利息制限法(2026/10/23時点)
低金利の奨学金であれば、返済を続けながら並行して少額積立を進める選択肢も十分に有効です。ご自身の適用金利と残債を確認した上でバランスを考えましょう。
まずは最低金額からスタートし、貯金が整ってきたら徐々に積立額を増やそう
最初から大きな金額を設定する必要はありません。「少額でまず仕組みを動かす」状態を作り、後から生活に合わせて金額を調整していくのが確実です。
※現在の新制度では「つみたて投資枠」という名称です。
現金貯金を進めながら口座開設と商品選びを済ませておく
生活防衛資金がまだ貯まっていない段階でも、口座開設の申し込みやファンドの選定といった準備はいつでも進められます。
下準備を済ませておけば、目標の貯金が達成できたその日からスムーズに積立設定をスタートできます。
最低設定金額から始めて、市場の値動きに慣れておく
投資信託は日々の相場によって基準価額が変動します。月1,000円などの少額から運用を始めておけば、一時的な下落相場が訪れても家計に影響を与えず、冷静に値動きの感覚を掴むことができます。
生活防衛資金と直近の予定資金が貯まった段階で、無理のない範囲で増額する
十分な生活防衛資金と近い将来の予定出費分が口座に確保できたら、毎月の手取りから無理のない範囲で積立額を引き上げていきましょう。
設定変更はオンラインでいつでも完結しますので、ライフステージに合わせて柔軟に見直していくのが20代の堅実な資産形成です。
次にやること
積立から外すお金が見えたら、次は残ったお金から毎月の積立額を決めます。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度や各金融機関のサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。
