NISAで「オルカン」を買おうと決めているものの、実際に買ったあとどう運用されるのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。ファンドの中身や特有の値動き、かかるコストを事前に把握しておくことで、運用開始後の迷いをなくすことができます。
この記事の結論
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を購入する前に押さえておくべきポイントは、次の3点です。
- 国別の比率では米国が63.4%を占め、ポートフォリオの半分以上が米国株である
- 投資対象が株式100%のため、相場状況によっては大きく値下がりする年もある
- 信託報酬のほかに、隠れコストを含む実質的な総経費率が発生している
これらを確認した上で、向かない人の条件に該当しなければ、つみたて投資枠を使って毎月の積立設定へと進みましょう。
S&P500と迷っている方はオールカントリーとS&P500の比べ方へ、まだ方針が決まっていない方はNISAで最初に買う1本の決め方をご覧ください。
NISAでの買い方だけ知りたい人はつみたて投資枠での買い方へ。
「人気だから」という理由だけで選ぶと、下落局面で運用を続けるべきか迷いやすい
選ばれる理由は十分にありますが、中身とリスクの特性を理解せずに購入すると、いざ下落した際に冷静な判断ができなくなってしまいます。
オルカンが絶大な支持を集める最大の理由は、1本で手軽に全世界の株式へ分散投資ができる点にあります。まずはその規模感と中身を最新の数字で確認してみましょう。
1本で世界中の株式に投資可能。純資産総額も10兆円超と圧倒的な規模を誇る
オルカンが連動を目指す指数は、世界47の国・地域の株式を投資対象としています(先進国23、新興国24)。組み入れ銘柄数は実に2359銘柄に及びます。
ファンドの純資産総額は138794.52億円(13兆円以上)に達しており、国内屈指の巨大ファンドへと成長しています。
ファンドの中身や特性を知らないと、下落時に適切な判断ができない
オルカンは手堅い分散投資先として紹介されますが、本質はあくまで「株式ファンド」です。市場の環境次第では価格が大きく下落することもあり、元本保証はありません。
中身を知らないまま下落を迎えると「銘柄選びに失敗したのでは」と狼狽売りにつながりかねません。以下で「中身」「値動き」「費用」の3つの要素をしっかり押さえておきましょう。
投資対象は全世界だが、実際のポートフォリオの過半数は米国株で構成されている
「全世界」という名称であっても国ごとの比率は均等配分ではなく、時価総額に応じた配分のため米国が半分以上を占めます。
「オルカン」は愛称。世界各国の株式指数への連動を目指すインデックスファンド
「オルカン」とは、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の公式愛称です。
ベンチマークとする指数は「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」となっています。
国別の配分は均等ではなく、米国1国で全体の6割超を占めている
ファンドの国・地域別構成比率の上位5カ国は次の通りです。
- 米国:63.4%
- 日本:5.2%
- 台湾:3.3%
- イギリス:3.0%
- カナダ:2.9%
※運用会社の月次レポートに基づく純資産総額比。
米国株専用のインデックス(S&P500など)との比較については、オールカントリーとS&P500の比べ方をご参照ください。
日本株も含まれるが、米国株に比べると構成比率はごくわずか
国内の株式も約5.2%組み入れられており、国別では第2位の規模ですが、米国の比率と比べると限定的です。
なお、全体の内訳を先進国と新興国に大別すると、先進国(日本含む)が87.9%、新興国が12.0%となります。
同一指数に連動する類似ファンドは他社にも存在。コスト等の比較も可能
金融庁のつみたて投資枠対象商品の中には、同じMSCI ACWIに連動するファンドが他社からもリリースされています。
運用会社ごとの信託報酬や純資産残高の違いを確認したい場合は、みんかぶ投信の比較ツールが役立ちます。
全世界に分散投資していても資産クラスは「株式」。相場環境によっては下落する年もある
どれだけ広く分散しても価格下落リスクはゼロにはならず、相場の波は避けられません。
複数国に分散しても株式リスクはそのまま。元本保証はない
オルカンは世界中の企業に広く投資していますが、投資対象は債券や預金ではなく100%株式です。
世界的な景気後退や金融ショックが起これば、当然ながら一時的に大きく値下がりする局面を迎えます。
原則「為替ヘッジなし」。円高・円安の為替変動も基準価額に影響する
オルカンは原則として為替ヘッジ(為替リスクを避ける取引)を行いません。外貨建ての資産を円換算して基準価額が決まるため、海外市場が横ばいであっても「円高が進むとファンド価格が下落し、円安が進むと上昇する」という為替影響を受けます。
過去の年間騰落率の幅(最大値・最小値)は目論見書で確認できる
ファンドの交付目論見書には、直近5年間の年間騰落率(過去の各月末時点における直近1年間のリターン幅)の推移が記載されています。
| 騰落率の指標 | 実績値 |
|---|---|
| 年間最大上昇率 | 47.9% |
| 年間最大下落率 | -5.6% |
出典:三菱UFJアセットマネジメント 交付目論見書(2026年7月25日)(2026/04/30時点)
※上記は特定の直近期間における過去の実績値であり、将来の運用成果を保証・示唆するものではありません。
【適性のチェック】下落時に狼狽せず保有し続けられるかどうかが判断基準になる
オルカンを活用した積立運用が向いているのは、以下のような方です。
- 当面使う予定のない余裕資金で、10〜20年以上の長期積立を前提としている人
- 一時的な下落相場が訪れても、慌てず毎月の積立を継続できる人
- 為替レートの上下や米国市場の動向による日々の値動きを許容できる人
一方で、以下のような方には不向きといえます。
- 数年以内に使い道が決まっており、元本割れすると困る資金を運用したい人
- 元本の目減りに対して強い精神的ストレスを感じてしまう人
- 各国の投資比率をご自身の裁量で細かく調整したい人
下落時の対応方針を購入前に決めておけば、相場急変時にも動揺しにくい
相場急変時にどのような行動をとるべきかについては、あらかじめ相場が下がったときにやること・やらなくていいことに目を通しておくことをおすすめします。事前に心構えを持っておくだけで、いざという時の判断が格段にブレにくくなります。
保有コストは信託報酬だけではない。運用報告書の「総経費率」で実質コストを把握しよう
購入時や解約時の手数料はかかりませんが、保有中には信託報酬に加えて間接的な運用コストが差し引かれています。
買付手数料と信託財産留保額はゼロ。かかるコストは保有期間中のみ
オルカンは購入時手数料がかからない「ノーロード」ファンドであり、解約時の信託財産留保額も設定されていません。発生する費用は、運用期間中に日々負担するコストのみです。
| 手数料の種類 | 発生タイミング | オルカンの条件 |
|---|---|---|
| 購入時手数料 | 買付時 | なし(無料) |
| 信託財産留保額 | 売却時 | なし(無料) |
| 信託報酬 | 保有期間中 | 年率0.05775%以内(税込) |
| 総経費率(実質コストの目安) | 保有期間中 | 年率0.07%(直近対象期間) |
出典:三菱UFJアセットマネジメント 交付目論見書(2026年7月25日)(2026/10/26時点)
信託報酬は純資産から毎日自動控除。純資産が増えるほど料率が下がる仕組み
信託報酬は投資信託の基準価額から日々差し引かれるため、別途自分で支払い手続きを行う必要はありません。
また、オルカンには「受益者還元型信託報酬」が採用されており、ファンドの純資産総額が大きくなるほど一定割合以上の部分に対して料率が自動的に引き下がる設定になっています。
監査費用や売買手数料などのその他コストも含めた「総経費率」を確認する
投資信託を運用する上では、信託報酬のほかに監査費用や有価証券の売買手数料、資産の海外保管費用などの諸費用が間接的に発生します。
これらすべてを含めたトータルコストの目安は、交付目論見書や運用報告書に記載される「総経費率」で確認できます。
NISAでオルカンを積み立てるなら、まずは基本の「つみたて投資枠」から活用しよう
オルカンは金融庁のつみたて投資枠対象商品に指定されているため、毎月の積立はまずこの枠でスタートするのが自然です。
オルカンはつみたて投資枠・成長投資枠のどちらでも買付が可能
オルカンは金融庁への届出が完了しており、つみたて投資枠と成長投資枠の両方で購入対象となっています。
毎月コツコツ積み立てる目的であれば、年最大120万円まで非課税で積立ができる「つみたて投資枠」を利用するのが基本です。
まとまった資金で一括購入したい場合は「成長投資枠」を利用する
成長投資枠は買い方の自由度が高く、定期的な積立はもちろん、スポットでの一括購入も可能です。年間最大240万円の枠が用意されています。
分配金を抑制してファンド内で再投資。効率的に資産成長を目指せる
オルカンは分配金の支払いを極力抑え、利益をそのままファンド内で自動再投資して複利効果を高める運用方針をとっています。設定日(2018年10月31日)以来、分配金実績は累計0円を継続しています。
NISA口座内で保有していれば売却益にも税金がかからず、非課税期間も無期限のため、腰を据えた長期運用にうってつけです。
主要ネット証券各社で取り扱いあり。最低積立金額などは各社画面で確認
楽天証券、SBI証券、マネックス証券のいずれでもオルカンの取引が可能です。
毎月何円から積み立てられるかやクレジットカード決済の還元率などは、各証券会社の個別案内ページで確認してみましょう。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度や各金融機関のサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。
