子どもの教育費も自分たちの老後資金も両方必要で、どちらを優先して準備すべきか頭を抱えているご家庭は多いはずです。この記事では、親自身のNISA口座を活用して、性質の異なる2つの資金をどのように整理・運用すべきかを解説します。
この記事の結論
優先順位は「教育費か老後か」という二者択一ではなく、「その資金を使う時期が近いか遠いか」という時間軸で判断します。
- 数年以内に使う予定の教育費:NISAには入れず、安全な普通預金などで確実に確保する
- 使うまで10年以上の猶予がある教育費と老後資金:親名義のNISAでまとめて積み立てる
- 毎月の家計余力に限りがある家庭:「生活防衛資金」→「直近の教育費」→「親のNISA積立」の順に配分する
親名義のNISAはいつでもペナルティなしで一部売却できます。高校や大学の進学時期が来たら、必要な金額だけを取り崩して現金化すれば十分に対応可能です。
子ども名義のこどもNISAの制度を知りたい人はこどもNISAとは?へ。
「教育費と老後資金のどちらを優先すべきか」で迷いやすい理由
どちらも将来に不可欠なお金ですが、利用時期までのタイムリミットや資金の性質が大きく異なります。
「子どもの進学」と「自分たちの老後」のどちらを先に準備すべきか迷ってしまう背景には、それぞれに異なる切実な理由があるためです。
「期日を動かせない教育費」と「後から準備できない老後資金」の板挟みになりやすい
教育費優先派は「子どもの進学時期は待ったなしで訪れる」という点を重視します。一方で老後資金優先派は「教育費は奨学金などの借入手段があるが、老後資金を貸してくれる公的ローンはない」という点を根拠にします。
双方に合理的な理由があるため、二者択一で白黒をつけようとすると結論が出なくなってしまいます。
教育費は時期と金額が予測しやすいが、老後資金は遠すぎて全体像が掴みにくい
教育費は子どもの現在の年齢から「何年後に高校・大学へ進学するか」が明確に分かります。
対して老後資金は何十年も先の話であり、公的年金の受給額や退職金の有無など不確定要素が多く、目標額を具体化しにくい傾向があります。
限られた家計から両方に振り分けようとすると、どちらの積立も中途半端に見えてしまう
毎月の手取り収入から教育費と老後資金の両方に資金を配分すると、1つあたりの積立額が小さくなり「これではどちらも足りないのでは」と不安を感じやすくなります。
しかし、利用時期の差を活かして資産の置き場所を整理すれば、無理のない両立が可能になります。
親のNISA口座は教育費と老後資金をまとめて運用でき、必要な時にいつでも一部売却できる
NISA口座は1人1口座ですが、口座の中で資金の用途を縛られることはありません。
NISA口座は1人1口座。親の口座1つで教育費と老後資金を一括運用すればよい
NISA口座は目的別に複数開設することはできず、原則1人につき1口座です。「教育費用NISA」と「老後用NISA」に分ける必要はなく、親のNISA口座の中で将来のお金をまとめて積み立てていきます。
分けるべきなのは口座の器ではなく、「いつ引き出すか」という時間軸です。
運用途中でいつでも売却でき、必要な金額だけを部分解約できる
NISA口座で保有している投資信託は、いつでも自由に売却可能です。全額解約する必要はなく、「今月必要な入学金分の50万円だけ」といった部分売却が認められています。
金融庁の公式ガイドでも、資金需要に合わせて柔軟に取り崩せる点がメリットとして挙げられています。
売却した分の生涯投資枠は翌年に復活するため、教育費で使った枠を老後用に再利用できる
現行のNISAでは、商品を売却すると、購入時の買付価格(簿価)に相当する非課税枠が翌年以降に自動で復活します。
子どもの進学時に一時的に取り崩して枠を消費したとしても、子どもが独立した後の50代から、復活した枠を使って改めて老後資金の積立を加速させることができます。
ただし元本保証はないため、直近で使う教育費をNISAに入れてはいけない
投資信託には価格変動があり、元本は保証されません。使う時期が間近に迫っている教育費を投資に回してしまうと、相場急落時に元本割れの状態で取り崩すことになってしまいます。
使う時期が遠い資金だけをNISAで運用し、直近の資金は現金で手堅く確保しておくのが鉄則です。
教育費と老後資金の優先順位は「使う時期の近さ」で仕分ける
「教育費か老後か」ではなく、「数年以内に使うお金(現金)」と「10年以上先のお金(親のNISA)」に切り分けます。
資金の使途と置き場所の対応関係は下表の通りです。
| 資金の性質 | 使う時期の目安 | 推奨される置き場所 |
|---|---|---|
| 手をつけない生活防衛資金 | 急なケガや出費(常に必要) | 普通預金などの安全資産 |
| 直近で使う教育費(高校入学金など) | 数年以内(1〜3年程度) | 定期預金や普通預金 |
| 将来の教育費(大学費用)と老後資金 | 10年以上先 | 親名義のNISAでまとめて長期積立 |
出典:編集部作成(制度の事実は金融庁「NISAを利用する皆さまへ」・「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」)(2026/10/23時点)
数年以内に使う予定の教育費は、相場の影響を受けない安全な預金で確保する
高校受験や中学進学など、数年以内に支払期日が確定している教育費は投資に回さず、預金として確実にキープしておきます。
使うまで10年以上の猶予がある資金なら、親のNISAでまとめて運用して問題ない
大学進学までまだ10年近くある段階であれば、一時的な相場下落があっても回復を待つ時間が十分にあります。
教育費と老後資金を厳密に分けず、親のNISAで同じインデックスファンドを積み立てていき、高校生になった段階で必要な学費分だけを順次利益確定して預金へ移していく運用が合理的です。
「老後資金は借りられない」という理由は、教育費の準備を後回しにする根拠にはならない
教育ローンや奨学金といった公的融資制度が存在することは事実ですが、奨学金を返済するのは将来の子ども自身です。
家庭の方針として子どもに負担をかけたくない場合は、借入を前提とせず、計画的に教育費のベースを準備しておくことが求められます。
こどもNISAは親のNISAの積立方針が固まった後の「上乗せ」として検討する
2027年1月スタートの「こどもNISA」は子ども名義の別口座となりますが、12歳までの払出制限など成人枠にはない制約もあります。
まずは流動性の高い親のNISA口座で家計の積立基盤を確立し、さらに余力がある場合にこどもNISAの活用を検討するのが安全なステップです。
毎月の積立原資が不足する場合は「生活防衛資金」→「直近教育費」→「NISA」の順に配分する
資金が足りない時に真っ先に削るべきはNISAの積立額であり、生活防衛資金を削ってはいけません。
毎月の家計余力に合わせて、次の優先順位で資金を割り振りましょう。
- 生活防衛資金(生活費3〜6か月分の現金預金)
- 数年以内に必ず発生する教育費の現金プール
- 上記を満たした後の余剰資金で行う親のNISA積立
生活防衛資金がないままNISAを始めると、急な出費のたびに取り崩すことになる
手元の現金が不足している状態で無理に積立を行うと、病気や冠婚葬祭のたびにNISAのファンドを売却せざるを得なくなります。相場下落時に解約を強いられるリスクを避けるためにも、現金の土台作りが最優先です。
直近の教育費を現金で確保した上で、残った余裕資金だけをNISAへ回す
近い将来の学費を確実に預金へ振り分けた後、残った金額が月5,000円や1万円であっても、その金額からNISAをスタートさせれば問題ありません。金額の多さよりも「途中で無理なく続けられる構造」を作ることが肝心です。
積立額は後からいつでも変更できるため、子どもの成長に合わせて見直せばよい
主要ネット証券なら積立金額の増減はオンラインでいつでも行えます。保育料の負担が減るタイミングや、小中学校の進学、親の昇給などに合わせて柔軟に金額を調整していきましょう。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度や各金融機関のサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。
