オールカントリーとS&P500のどちらを選ぶべきか迷ってしまい、積立を始められずにいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、MSCI ACWIという代表的な指数を「オールカントリー(全世界株式)」と呼び、それぞれの指数に連動するインデックスファンドを比較しながら解説します。

この記事の結論

どちらが絶対に優れているという優劣ではなく、「米国以外の国もポートフォリオに含めるかどうか」という方針の違いで決まります。オールカントリーの中身にもすでに米国株が組み込まれており、違いは「米国以外の比率を持つか持たないか」に集約されます。

選び方の目安は、主に次の3パターンです。

  • 特定の1国の景気に将来を委ねたくない人:オールカントリーが適している
  • 米国の経済成長力に期待し、一時的な不振があっても続けられる人:S&P500が適している
  • 決めきれずに手が止まっている人:まずは納得できるどちらか1本でスタートして問題ない

積立先の商品は、運用を始めた後からでも別のファンドへ変更可能です。主要ネット証券(楽天・SBI・マネックスなど)では、積立銘柄を変更しても過去に買い付けた分が勝手に売却されることはありません。

選んだあとに変えられるかだけ知りたい人は積立先をあとから変える方法へ。

「どちらが正解?」と迷いやすいのは、比較する期間によって優劣が入れ替わるため

過去の比較期間や為替レート(円建て・ドル建て)で見え方が変わるためであり、どちらの投資方針にも合理的な根拠があります。

迷って手が止まってしまうのは無理もありません。どちらを選んでも筋の通ったロジックが存在するためです。ただし、積立設定は後からいつでも変更できるため、過度に正解を追い求める必要はありません。

比較する期間や通貨(円・ドル)によって過去の順位が逆転する

過去のリターンを比較する情報はネット上に溢れていますが、切り取る期間によって勝敗は容易に入れ替わります。また、円ベースで計算するかドルベースで計算するかによってもパフォーマンスの見え方は異なります。

過去の実績はあくまで過去のものであり、将来のリターンを約束するものではありません。そのため本記事では、過去の利回り競争ではなく「投資先の構造」に焦点を当てます。

「世界への分散」と「米国の成長力重視」のどちらも理にかなっている

世界中に分散させる方針は、どこか1国の経済が停滞した際のリスクを抑えるための王道です。一方で米国に集中させる方針は、世界経済を牽引してきた米国企業のダイナミックな成長力をダイレクトに享受するための考え方です。目的が異なるだけで、どちらの主張にも確かな合理性があります。

「一度決めたら変更できない」と思い込み、失敗を過大に恐れてしまう

「一度選んだら後戻りできない」と考えてしまうと、銘柄選びのプレッシャーが跳ね上がってしまいます。しかし実際には、運用開始後も積立先は柔軟に切り替え可能です。具体的な変更ルールは最後の章で解説します。

2つの指数の最大の違いは「米国以外の国もポートフォリオに含めるか」

オールカントリーは日本を含む世界の主要株式に、S&P500は米国の代表的な主要企業に投資する指数です。

オールカントリーは日本を含む全世界が対象(中身の6割以上は米国株)

金融庁の区分においても、MSCI ACWIは「内外(全世界)」、S&P500は「海外(米国)」の指数として位置付けられています。どちらもつみたて投資枠の対象となる指定インデックスです。

実はオールカントリーの構成比率のうち、約6割強は米国株が占めています。つまり両者の違いは「純度100%の米国株」にするか、「米国株を主軸にしつつ他国にも分散させるか」という点にあります。

オールカントリーとS&P500の投資先と、つみたて投資枠の対象ファンド数
項目オールカントリー(MSCI ACWI)S&P500
主な投資先日本を含む全世界の株式米国の主要株式
つみたて投資枠での指定指定インデックス指定インデックス
対象となる公募投資信託数20本19本

出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」/金融庁 つみたて投資枠対象商品届出一覧(対象資産別)(2026/10/23時点)

※本数は金融庁公表一覧の指数別データ(ETFを除く)。オールカントリーには「除く日本」等のシリーズも含みます。

過去のリターンの差は切り取る期間次第。将来のパフォーマンスを保証しない

前述の通り、どちらのリターンが高かったかは計測する時期によって変動します。直近の数年間で一方の調子が良かったとしても、今後10年・20年先も同じ結果が続くとは限りません。

信託報酬はどちらも超低水準。つみたて投資枠の基準内に収まる

つみたて投資枠の対象となる海外・内外株式インデックスファンドは、信託報酬が年率0.75%以下に制限されています。現在市場で人気のオールカントリー系・S&P500系ファンドは、いずれも年0.1%前後と非常に低いコスト水準で競い合っています。

ファンドごとの詳細なコストや運用残高は、みんかぶ投信(NISAで買える投資信託のランキング)で手軽に比較できます。

海外資産を含むため、株価の変動だけでなく為替(円高・円安)の影響も受ける

どちらのファンドも海外資産を多く組み入れているため、現地の株価変動に加えて為替レートの変動影響を受けます。円安は基準価額の押し上げ要因に、円高は押し下げ要因として働きます。

※オールカントリーを検討する際の詳細な留意点は、オールカントリーを買う前に知っておきたいことでも詳しく取り上げています。

選び分けのシンプルな基準(「1つの国の成長力に資産を託せるか」)

どちらのファンドにも向き不向きがあります。ご自身の投資スタンスに合う方を選びましょう。

自分自身の性格やリスクへの向き合い方に合わせて、どちらがしっくりくるかを確認してみましょう。

【オールカントリーが向く人】1国の景気に左右されたくない人(米国株との比較が気になりすぎる人には不向き)

オールカントリーは、米国の成長をしっかり取り込みつつも、将来もし別の地域が台頭してきた場合にその成長も自動で取り込みたい人に適しています。

一方で、「米国株単体の指数と比べてパフォーマンスが劣っている」と目先の差が常に気になってしまうタイプの人には、ストレスになりやすい面もあります。

【S&P500が向く人】米国の成長に期待したい人(米国の停滞局面で後悔しそうな人には不向き)

S&P500は、世界のイノベーションを先導する米国企業群の強さを信じ、長期的に高いリターンを追求したい人に向いています。

ただし、米国経済が長期的な不振に陥った際に「やっぱり全世界に分散しておけばよかった」と積立をやめたくなってしまいそうな人には不向きです。

2本を半分ずつ併せ持つと、オールカントリー単体よりも米国株の比率が高くなる

「決めきれないから半分ずつ買いたい」と考える方も少なくありません。オールカントリー自体にすでに6割以上の米国株が含まれているため、両方を半分ずつ保有するとポートフォリオ全体の米国株比率は約8割にまで高まります。

2本を組み合わせること自体に問題はありませんが、実質的には「米国株比率をより高めた全世界投資」になる点を理解しておきましょう。

積立先は後からいつでも変更可能。迷ったら納得できる1本でスタートしよう

積立先を変更しても、過去に積み立てた分は売却されずに非課税のまま保有可能となっています。

積立先を変更する際は、現在の設定を変更または再設定するだけで完了する

積立先を切り替える手続きは非常にシンプルです。管理画面上で対象銘柄を変更するか、現在の積立設定を解除して新銘柄を設定するだけで移行できます。

主要ネット証券各社であれば、オンライン操作だけでスムーズに完了します。

積立を切り替えても過去の買付分は売却されず、非課税で運用が継続する

積立設定を別のファンドに変えたとしても、それまで買い付けてきた投資信託が勝手に売却される心配はありません。1本目の残高をそのまま維持しながら、翌月以降の新規買付だけを2本目に切り替えることができます。

現行のNISAは非課税期間が無期限なので、売却しない限り1本目の資産も非課税の恩恵を受け続けます。

保有分を売却して乗り換える場合、枠の復活は翌年以降になる点に注意

既存のファンドを売却して新しいファンドへ資金を移し替えることも可能ですが、売却した分の生涯投資枠が復活するのは「翌年以降」となります。

また、その年の年間投資枠(つみたて投資枠なら120万円)は一度使うと年内には使い直せません。急いで既存資産を売る必要はなく、まずは「今後の積立先だけを切り替える」形をとるのが無難です。

次にやること

オールカントリーかS&P500かが決まったら、次は最初に積み立てる1本の決め方を確認します。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度や各金融機関のサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。