ネットやSNSで「積立NISAはやめたほうがいい」という極端な意見を目にして、積立設定を前に手が止まってしまった方は少なくないはずです。この記事では、そうした批判の声が「どんな家計状況の人に当てはまるのか」を客観的に判定できるよう整理しました。
この記事の結論
「やめたほうがいい」という警告が本当に当てはまるのは、主に次の3つの状態に該当する人です。
- 生活費の数か月分に相当する「生活防衛資金(現金)」がまだ手元にない
- 数年以内に使い道が決まっている予定資金を投資に回そうとしている
- リボ払いやカードローンなど、金利の高い借入が残っている
これら3つのいずれにも該当しない方であれば、「やめたほうがいい」という声に過度に怯える必要はありません。値動きが不安な場合は、まずは少額(月100円〜1,000円など)から小さくスタートし、相場の感覚を掴んでから積立額を調整していけば十分です。
なお、すでに積立運用中の方で上記に当てはまる場合は、焦って保有商品を解約するのではなく、まずは「新規の積立設定を一時停止」するだけで適切に対処できます。主要ネット証券各社なら、積立をストップしても過去に購入した分は非課税のまま口座に残ります。
理由をすでに知っている人は当てはまる人の3つの条件へ。
「積立NISAはやめたほうがいい」と言われる3つの背景(原因の多くは資金選びのミス)
制度自体の構造的なデメリットはごく一部であり、大半の失敗談は「生活資金や短期の資金を投資に回してしまったこと」に起因しています。
※現在の新制度では「つみたて投資枠」という名称です。
「やめたほうがいい」と主張される代表的な理由は、主に次の3点に集約されます。
値下がりした時期に解約を強いられると、元本割れで損失が確定してしまう
NISA口座で運用する商品であっても元本保証はありません。市場が下落しているタイミングで解約してしまうと、投資元本を下回る価格で損失が確定してしまいます。
ただし、損が確定するのはあくまで「途中で売却した場合」に限られます。
NISA口座内で生じた損失は、特定口座などの利益と損益通算できない
NISA口座で発生した損失は、一般の課税口座の利益と差し引いて税金を抑える「損益通算」が認められていません。また、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」も対象外です。
これは税制上の明確な制約であり、どのような資金で運用していても共通するポイントです。
生活費を削って無理に積み立ててしまい、家計が破綻した事例が拡散されている
貯蓄余力を無視して高額な積立を設定すると、急な出費に対応できる現金が手元から底をついてしまいます。その結果、相場の下落期であっても生活費のために投資信託を取り崩さざるを得なくなります。
これは制度自体の欠陥というよりも、家計に合わない資金配分を行ってしまったことが原因です。
成否を分けるのは性格ではなく「下落局面でそのお金を取り崩さずに済むか」
下落しても売却しなければ損失は確定しません。最も困るのは「値下がりしている最中に売らざるを得ないお金」を投資に回してしまうことです。
「リスクに耐えられる強いメンタルがあるか」という精神論で語られがちですが、本質的な分かれ目は「生活防衛資金が別枠で守られているかどうか」という家計構造にあります。
売却しない限り含み損にすぎず、市場の回復をじっくり待つことができる
投資信託の基準価額が下がっても、口座内で保有し続けている限り損失は確定していません。
長期的な世界経済の成長を前提に保有を続ければ、市場が再び回復する余地を十分に活かせます。
途中売却できるからこそ、急な出費時に下落相場で手放してしまうリスクがある
NISAはいつでも自由に換金できる流動性を持っています。しかし手元の現金預金が不足していると、不運にも暴落が起きたタイミングで生活費のために資産を売却せざるを得なくなってしまいます。
積立を停止しても過去の購入分はそのまま非課税で運用継続できる
「積立を止めること」と「保有分を売却すること」は完全に別の手続きです。主要ネット証券各社では、毎月の積立を解除しても、過去に買い付けた分が強制的に売却されることはありません。
積立を停止した後も、すでに口座にある資産は非課税期間無期限のまま運用が継続します。
今すぐの積立を避けるべき「3つのチェック項目」
以下のいずれかに該当する場合は、相場の下落時に資金を取り崩すリスクが高いか、投資よりも優先すべき資金使途が存在する状態です。
ご自身の状況を以下の3点と照らし合わせてみてください。
- 病気や休職、急な出費に備える「生活防衛資金」が十分に貯まっていない
- 数年以内に使う予定の教育費や住宅購入資金を投資に回そうとしている
- カードローンやリボ払いなど、金利の高い借入の返済が残っている
1つでも当てはまる項目がある場合は、まずその課題の解消を最優先にしましょう。すべてクリアできている方は、安心して少額からスタートできます。
① 生活防衛資金がまだない人:急な出費で下落時に解約しないよう、まず現金を貯める
毎月の手取りを使い切ってしまい預金残高がほとんどない状態で投資を始めると、冠婚葬祭や家電の買い替えなどのたびに投資信託を売却することになります。
まずは生活費の数か月分に相当する現金を普通預金に確保し、生活の土台を固めることが先決です。
② 直近で使う予定の教育費や頭金:回復を待つ時間がないため、投資に回さず預金で管理する
数年後の子どもの大学入学金や住宅の購入費用のように、支払期日を動かせない資金を投資で増やそうとするのは危険です。
必要な時期にちょうど不況が重なってしまうと、元本割れの状態で支払いに充てざるを得なくなります。使途と時期が明確なお金は、安全確実な銀行預金で備えておきましょう。
③ 高金利の借入がある人:投資の利回りよりも確実に利息負担を削る「借金返済」を優先する
消費者金融やリボ払いなどの金利(年15%前後)は、一般的な投資信託の期待リターン(年3〜5%程度)を大幅に上回ります。
投資で利益を狙うよりも、借金を一刻も早く完済して利息の支払いをなくす方が、家計にとって確実かつ最大の利回りを生み出します。
【すでに積立中で当てはまった場合】全額解約せず、まずは管理画面から積立をストップする
すでに運用を始めている段階で上記に心当たりがある場合でも、慌てて保有資産を全額売却する必要はありません。
まずはオンライン管理画面から「毎月の積立設定を一時停止」し、月々の現金の流出を食い止めましょう。手元のキャッシュフローを正常に戻すことが最優先です。
条件に当てはまらない人は、少額の積立からスタートして値動きに慣れよう
3つの条件に該当しないのであれば「やめたほうがいい」という声は当てはまりません。不安な方は小さな金額から試していきましょう。
少額で積立を始めて値動きを体験することが、将来の増額に向けた自信になる
「元本割れが怖い」という漠然とした不安を解消する一番の近道は、家計に影響のないワンコイン程度の少額で実際に相場の上下を体験してみることです。
資産が増減する感覚を自身の口座で掴むことで、将来的に昇給などで積立額を増やす際の判断材料として活用できます。
条件に当てはまった人も、生活防衛資金の確保や返済完了後にいつでも再開できる
現在条件に引っかかってしまった方でも、一生NISAができないわけではありません。手元の現金が貯まったり借入の返済が完了したりした段階で、いつでも健全な状態で資産運用をスタートできます。
NISAの非課税枠は逃げませんので、ご自身のペースで家計の基礎体力を整えていきましょう。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度や各金融機関のサービス内容は変更される場合があります。最新の情報は金融庁および各金融機関の公式サイトでご確認ください。
